□参議院選挙と「プラスの縮小戦略」 令和元年8月8日
 2年前の衆議院選が終わった年の冬、「そういえば新人の時、盆暮れに銀座の靴店の靴券が配られていた」と言っていたのは議員生活35周年になろうとする政治家だった。「選挙は足で稼ぐもの、歩けば歩くだけ靴底が減る、普段のまめな活動が大事」ということを言っていた。分かりやすいメッセージが込められた新人への贈り物と言える。選挙制度がそうさせているのだろうが、党の公認さえ貰えれば何とかなってきた最近の選挙情勢、「原点に立ち返れ」という的を得た指摘だった。ましてや6年間、解散もない参議院議員は日頃の活動も滞りがち、ちょっとした逆風で議席が入れ替わってしまう。全国各地の参議院選挙区の結果を大きくまとめればこんなところだろうが、投票率の低下以上に党員票が減った比例区の選挙についての分析はあまり見当たらない。佐藤のぶあき参議院議員3期目、振り返ってみれば建設業界の今が見えてくる。
 2か月半の間に県内各地を概ね4巡、建設業が抱えている課題と期待、時間をかけて説明をしてきた。各地区3度の座談会形式の会合に加えて企業回り、いい経験をした。短期決戦を目指して動き回った。5月の連休をはさんで立候補予定者に推薦状を渡すことからスタート、全国各地で群馬が最後だったと思う。「形式だけの推薦状とは違う、12年間の実績に対する評価と今後の期待を込めた推薦状」と解説をしながら12地区全域で推薦状を手渡してきた。「選挙区」と「比例区」の違いも樹木の絵を使って説明をしてきた。「6年連続で上がってきた設計労務単価、調査基準価格の引き上げ、補正予算を含めた防災減災・国土強靭化のための予算」など、この12年間で変わってきた建設業界を取り巻く環境のおさらいと「個人票の多さで当落と政策に対する期待度が測られる」といった話までしながら事業所を訪問してきた。
 3年前にも同じようなことをしてきたが、地域を回るとそれぞれの雰囲気が見えてくる。これは実際に回ってみないと体験できない、建設業協会の運営にも役立つと思って時間を見つけては回ってきた。生の声こそ地域の皮膚感覚として浸み込んでくる。女性が頑張っている企業は元気がいい。規模がそんなに大きくなくても女性の力で組織がまとまっている。「地域の建設業の原点は家業」ということを改めて感じさせられる。「社屋の雰囲気からきびきびとした対応まで地域全体が元気な地域」と「訪問しても会社に誰もいない限界工事量を割り込んだような地域」、地域間格差そのものも見えてくる。「元気な地域」は、「民需を含めて地域全体が元気な地域」と「公共事業のプロジェクトが最盛期で元気な地域」にも分けられる。その日のうちにお礼状も一言添えて出すといった協会員との距離を縮めた2か月半が終わった。
 靴の底が抜けるような動きに集中してきた。選挙の結果はどうだったか?地域別の雰囲気と照らし合わせてみると面白い。「地元を選挙区のようにしている比例の候補者が2人もいた」とか、「知事選とトリプルだから比例にまで投票行動が辿りつかなかった」とか、「県外から大物国会議員が応援に来なかったから盛り上がらない」とかいろんな条件を上げられないことはないが、票数だけで分析をしてみる。元気のある地域は概ね個人票が少なく、逆に厳しそうな地域が期待票として積みあがっていた。佐藤のぶあき候補が言い続けた「新3K、給料・休日・希望」は、「生産性の向上」を通した構造改革のことを分かりやすい言葉で語っていた。ぬるっとした「従来型の拡大戦略」からエッジの利いた「プラスの縮小戦略」へと向かう覚悟を建設業界に問いかける良い政策だった。相変わらず「もうひとやま」を待ち続ける戦略から抜けきれない「プロジェクト最盛期の地域」が垣間見える選挙結果だった。
(文中敬称略)




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●原稿引用ページ
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