□  安すぎる価格                           平成14年5月21日



 ‘ものつくりの原点’を問いかけられた。10日程前のNHKTVの番組「クローズアップ現代」。‘フェアトレード’発展途上国の産品を購入し、その国の人々を知り支援する「公平貿易」、経験・技術・人を「分かち合う」ことだ。ただ安い労働力の国で生産し、安い価格の商品をつくりだすことへの危うさへの警鐘だ。つくる喜びがあって、買い手にも喜んでもらえ、結果、商品がそれに見合った正当な、フェアな価格で確実に売買され、伸びていく。決して買いたたきの世界ではない。ブランドほど高くはないが、決して安くはない商品をつくりだす。

 イギリスの‘プリングル’老舗のニットメーカー。高い技術力を誇っていた。世界が1つになった今、安い労働力を提供してくれる国を次々とまわり続けば、安価な商品をつくり出すことは可能だ。一時的に安く大量の商品を市場に供給して、シェアの拡大を計れることが出来る。他のメーカーも同じ戦略に打って出るし、又、安い労働力の国をめぐりまわる商法は、いつか行きついてしまう。その国で働く人たちにも、ある意味で一方通行の‘フェア’ではない取引だ。
 お金と時間がかかっても、工夫して少しでも丈夫で良質な商品をつくるという原点にかえった。生産工場でつくりだす人たちの技と心を大切にした、手間ひまかけた商品をつくる方向へと再び変換したのである。農家の生産者たちが、自分の名前の入った野菜を直売所に持ち込む考え方と共通するものがある。手間ひまかけてていねいに工夫して、名前のついた野菜をつくる喜びと、おいしく食べてもらう喜び、そしていいものを買った喜び…。今人気の直売所の、農業の生産者と消費者の関係と、底流で共通するものがある。

 ‘コーヒー文化’。イギリスは元々、日本の緑茶文化と同じ紅茶文化の国。安いコーヒー豆の生産国、発展途上国から輸入して、それに手を加えたコーヒーを飲む、コーヒー会社も着実に根強い人気を得ている。素朴なコーヒーの飲み方しか知らない、生産国の人たちに対して、手を加えたもっとおいしい飲み方、効率的な生産の技術を教えること、その教えもイギリスの一杯のコーヒー代にきちんとわかるようにのせている。イギリス人のフェアな精神に共感を得ている。ただ安く原材料を買いたたくのではなく、安価な良い材料を提供してくれることへのお返しの精神が評価される。ギスギスしたものでない、本来の意味でのギブアンドテイクの精神でしっかりと結び付けられている。

 ‘牛乳が安すぎませんか’。連休前、生産者の勇気ある全面広告が載っていた。スーパーの客寄せ目玉商品として買いたたかれている。毎日の食料にとって大切なのは、良質で安全、安心。1リットル200円近辺が定価であるが、いつも120円近辺。安いのはいいが、最近の問題が出る土壌はこんなところにあるのかも知れない。



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