□ 終わらない設計 平成14年5月24日
コストエンジニアには「設計の資質」と「施工知識」が要求される。曖昧模糊とした設計の品質を、コストを尺度にして評価する環境がまた醸成されていない。 (A)図 (B)図 事業企画段階から設計→施工→完成・引渡しまでのフローを、建設コストを軸にした情報量との相関関係のモデルを(A)図、(B)図に示した。事業企画段階でのコスト把握の重要性、情報量は設計者側に最大限提供される。設計が進行するにつれて、情報量は設計図書に転写されていく。設計図書、完成時、つまり着工時はすべて転写完了、限りなくゼロに近づいたかたちが(A)図であり、(B)図では着工時にはコスト情報は未消化であり、工事期間も含めた竣工時まで引きずられていく。 アカデミズムの府、大学の教育では、コストについて教え、教えられる事は常に避けて通ってきた。時間をかければかけただけ良い設計が出来上がるのであり、最後の竣工までの期間が設計の期間なのである。図面渡し寸前一週間前にガラリと設計を変更し、徹夜で間に合わせたなんて著名建築家の話は沢山ある。良い設計の為にきちんとしたコスト優先の話は置き去りにされてしまう。 今の世の中、初期の事業計画の目標(ターゲット)コストは、資金計画、収支計画にとって何よりも重要であり、予算を超えることは許されない。(A)図は海外での設計完了時の姿であり、(B)図は身近な設計、そして施工の体系である。設計完了とともに、同時に施工者に渡った設計図書がそのまま施工をするための図書になるかの差である。施工段階でのコスト情報が処理されきっていない。「終わらない設計」状態の中に、コストの二重性があるのに気付いていない。
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