□ 小学校 平成14年5月30日
絶対音感は生まれついたものかも知れないが、小さい時から良い音楽に親しむことによって、感性はしっかりとつくり上げられていく。建築も、いかに空間の「原体験」がきちんとできているかどうかによって、影響されるということにあまり気付いていない。 中学校、高校、大学でなく、小学校の設計が出来るかどうかが、一人前の設計者の基準である。今は8m×8mの教室基準にとらわれない、フリースペースをとったオープンシステム、教育システムと連動して考えなければならないが、小学校の設計には、いろんな複合された与条件を整理し、まとめる能力が必要となる。自我の確立していない低学年と、高学年をうまく分離できるか、低学年用の屋外施設は、体育館への動線は、上下足の分離、採光、視線の見え方、グループ学習に対応できるか。いくつもの教室が組み合わさった、群造形の能力も試される。要は住居の延長、集落としての都市そのものなのかもしれない。地域住民のコミュニティの核として小学校は位置付けられ、解放された学校としての枠組みも要求される。 子供が最初に自分の住居以外で、大きな空間の原体験をするのが小学校である。校庭の隅の大きな木であったり、階段室の手すりにつかまって見上げる吹抜けの空間。長い廊下と射し込む光。仲間たちと一緒に学び、遊んだ背景として、小学校の空間が「記憶」として集積されていく。 木の小学校、どうやって木の大きな丸柱がつくられたか、どこの山から切り出して来たのか、子供たちに教えてやることが大切だ。わたしたちの会社が木造でつくり上げた、自分と同級の小学校の校長先生から聞かされた話は興味深い。小学生の時に接する初めての大きな空間の「原体験」。建築をつくり上げる施工者、設計者にとっても、「空間」の働きかける意味が大きいことを忘れてはならない。
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