□  まあるい田んぼ                           平成14年6月4日



 「棚田」の風景。中山間地、平野と山岳地帯の中間に位置する。都会の人たちにとって、段々状になった不定形の田んぼの景色にたまらなく魅かれるらしい。自然のかたち、等高線(コンタ)状につくられた田んぼに、ほのぼのとした郷愁を覚える。「棚田」の風景を残して大事にして欲しいという声がかなり聞こえるようになった。

 鎖国から開放された日本の風景を見て、手入れの行き届いた農業をまさに「庭園」だと感嘆したという。山を背景にして、綺麗に丹精を込めて植え付けられた田植え、そして秋になり一面の黄金の穂がなびく田園風景は、イギリスと較べて美しい「庭園」そのものであった。今、田んぼに水が張られ、田植えの時季も終わろうとしている。緑のじゅうたんへと変わりつつある。

 ‘圃場整備’。生産性を上げ、後継者不足の中、機械化農業に向けて全国各地で土地改良事業が行われてきた。耕作者の要望を聞きながらの工事なので、一般の土木工事と違って作業は大変だ。農地の入れ換え、換地も伴う。機械化農業への脱皮を目指して、合理的、機能的な田んぼにかたちを変えるために、四角い、大きめの田んぼの組み合わせがつくりあげられる。北海道から九州まで機能的な、整然とした田園風景が出来上がる。

 四角の田んぼのコーナーはやはり手植えに頼らざるを得ない。「まあるい田んぼ」不定形にしても利点はある。定規のないかたちだから、工事と設計は益々大変になるが、不定形になった途端、あぜ道はくねくねし出す。裏返して考えてみると、農作業の人たちにとってくねくねした間に出来る無駄なフリースペースも、植栽したりして休憩時のポケットパークになるかも知れない。植栽されたポケットパークがランドマーク(目印)として活きてくる。単純な直線の移動より体で覚えて毎日の作業は単調でなくなる。自然のかたちに合わせる、環境にやさしい土木工事、親水護岸、ほたる水路、木の水路など、かなり実施されるようになってきた。技術者もセンスがなければ、定規がない分大変だ。都会の人たちが憧れる、不定形の「まあるい田んぼ」もつくられるようになるかも知れない。

   



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