□ 失敗の本質 平成14年6月21日
不安感に裏打ちされた‘目的の二重性’からは、‘あいまいさ’を捨て去ることは出来ない。 ‘失敗の本質’日本軍の組織論的研究(中央公論新社)を読んだ。1984年5月ダイヤモンド社刊行、1991年8月10日初版、2001年10月5日、20版の文庫本で版数を重ねているから、かなりの人達が読んでいることになる。序章から第三章まで太平洋戦争の日本軍の作戦の失敗をとらえなおし分析している。軍事用語もなるべく使われていないから幾分読み易いがそれでも難解だ。 海戦のターニングポイントであった、ミッドウェー作戦についての分析は面白い。ミッドウェー海戦は連戦連勝を続けてきた日本軍が初めて経験した挫折であり、「太平洋の戦局はこの一戦に決した」と言われても言い過ぎでない。山本連合艦隊司令長官がとった作戦目的は、「ミッドウェー島を攻略し、ハワイ方面よりする我が本土に対する敵の機動作戦を封止するとともに、攻略時出現することあるべき敵艦隊を撃滅するにあり」だった。ミッドウェー島の攻略を目指し、別に米艦隊撃滅を目的とした。ニミッツ提督が「二重の目的」と評したように、目的の二重性があいまいさを露呈する。ニミッツ提督は「空母以外に手を出すな」と厳命し、目的を単一化することが戦略だったのである。日本軍は中心的な役割を果たしてきた大型正規空母4隻を失い、米国側の損失は空母1隻にとどまった。 ‘演繹的’に目的を達成するために何をすれば良いか計画をたてて実行することが大事だ。売上げを達成するためにはどれだけのエネルギーをかけたら良いか。勿論その前の経営計画方針をきちんとたてることも必要だ。週間のスケジュールを立て、毎日目的を持って行動し、月次できちんと締めていく。目的をしぼらないと、何がなんだか、毎日の行動が見えなくなる。とっさの変化にも敏感に対応できない。組織の弾力性もそれに合わせて重要になってくる。要は‘帰納法’的にとりあえずできるところから始めていこうでは、目的の検証作業は難しくなる。 ‘景気回復しつつ構造改革’、目的の二重性。ややもすると不安感をぬぐい切れなく、経営者は‘目的の二重性’あいまいな経営戦略に走りやすい。常に安全弁をかかえながら、結果総花的な、なんでもありの世界に入り込む。△△△便が厳しくても、大口、法人扱いの運送を捨て、個人向けの小荷物に目的を特化して成功した例などはあげればキリがない。‘あいまいさ’を切り捨てることによって‘目的’は浮き彫りになってくる。 参考文献・・・・・・「失敗の本質」(中央公論社)2001年10月5日発行
|
「森の声」 CONTENTSに戻る |