□ 見積は数秒で 平成14年7月1日
建築主から最大限の建設費を引き出せる能力があるかどうかが何年か前までの設計者の能力だったかもしれない。自分達の設計した建築に対して、上手に説明することによって建築主は納得し、建築主は建設費を最大限出す事になった。企画力、デザイン力に加えてコストをきちんとマネージメントできる能力が、今の時代強く求められている。 ここ数年、今でもむき出しの市場原理に基づいた価格競争が止まらない。需要と供給のバランスの中に附加価値を乗せることによって、マーケットはマーケットとしてはじめて機能する。建設市場はマーケット性が機能しにくい産業である。積算担当者が時間をかけて作り上げてきた見積りを、いろんな角度で営業担当者を交えて決裁し、見積書が出来上がる。積上げコストで独自の単価ファイルを使って作り上げてきた見積書。他社との見積価格との違いに驚かされる。何が正しい価格なのか、判断に苦しむ場面の繰り返しだ。 土木工事においても、市場価格がかなりのウェイトで導入されだしてきた。要は実際の取引価格をデータベース化して入札価格に反映しているのである。(社)建設物価調査会の建設ナビ。今年の3月までに、全国で約8000件の建築工事の実勢取引をデータベース化した。4月からは公共工事もデータベース化して、益々データの蓄積を充実させていく。建築主と企画段階でどれだけの規模の建築をつくりたいか、どれだけの資金調達能力があるか、資金回収計画は、どういった設備のグレードにするか、地盤の状態はどうなっているか、場所打杭か、既成杭か…。‘見積りは数秒で’誤差なく把握できる。これだけの量データベース化されると、建築主に公平な第3者の建築コストとして説明がしやすくなる。 今現在は都心大型マンション需要は好調だ。しかし、あっという間にマンション需要は落ち込んでいってしまう(大手マンションデベロッパー担当者)。「スピード」と「変化」の時代、正しい建設コストを早い段階で把握し、事業計画の手戻りは許されない。設計者の査定より建設会社のコストが低い時代はそろそろ終わりが近づいている。
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