□ ヒルサイドテラス 平成14年7月12日
自然発生的な集落には、水があって眺めの良い場所からかたちづくられていくというような‘場の力’(アリストテレス)がある。「都市が建築をつくる」場面もあるが、逆に「建築が都市をつくる」場合もある。 代官山‘ヒルサイドテラス’。数年ぶりに訪れた。設計者槇文彦。1969年に第1期工事が始まり、第2期、3期…6期と現在に続いている。集合住宅、小さなoffice、展示スペース、雑貨、サンドイッチの店、レストラン、ブティック…。建築が旧山手通り沿いに細長く、低層で配置され、それぞれの店が歩く人にとってのショーウィンドーとしてきちんと機能し、中庭、階段、ピロティ、サンクンガーデンなどが一体となって、お洒落な都会的な雰囲気をかもしだしている。 25年程前、約1年間近く‘ヒルサイド’の中で図面を画いていた。毎日渋谷からみどりの丸型の電車に乗って代官山の駅の階段を上り切ると、そこは静かな住宅街。歩道橋から眺め降しながら‘ヒルサイドテラス’にたどりつく。同潤会アパートの昼食は人気があった。12時過ぎに行くと売切れ。同潤会の共同スペースを使って限定何食かをまわりの人達に提供する、今でいう煮魚とかの手料理、スローフード。手軽に食べられるレストランは代官山には当時数えるほどしかなかったのである。同潤会アパートはタワーマンション「代官山アドレス」に建て替えられている。 ‘ヒルサイドテラス’が誕生した時から代官山周辺、旧山手通り沿いの街並みは確実に変わりだした。元々大使館、ブティックなどが点在する旧山手通り。‘ヒルサイドテラス’のデザインを意識し、距離を測りながら個々の建築のデザインが決定されていく事によって、旧山手通りは本当に‘お洒落な街’変わっていったのである。きちんとデザインをすることによって「建築が都市を変えていった」代表的な例であり、東京で気に入っている建築である。 |
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