□ 断面からの設計 平成14年7月16日
道路拡張工事にあって、唐突に建築の何分のいくつかを切り取られた光景を、稀だが目にする。いつもは建築の立面だけを見ていたものが、ブルーシートに覆われる前の、目にすることのできない筈の建築の断面から、そこに生活している人のスタイルが直に伝わってくる。 ‘平面からの設計’。いきなり間取りから始める設計が一般的だ。間取りといわれるように、必要なスペースを区切ったり、足したりしながら平面計画は決定されていく。居間、寝室、子供室、水廻り…そして平面の延長として、自動的に立面のかたちもつくられていく。‘平面の設計’は、必要なスペースを把握し、人の平面的な動き方、動線をどうするかまとめる2次元の世界である。 ‘断面からの設計’。2次元の平面、そして3次元の立体に空間としての息吹を与えるのが開口部であり、開口部からの光、風が作用することによって建築空間として機能する。吹抜けの空間を体験するのも断面からのアプローチであり、トップライトから射し込む空間の演出も断面を考えなければつくり出すことは出来ない。建築空間を体現しながら、そこで生活する人の動きに感覚として直接関わって、目に見えるかたちは建築の断面なのである。 ‘断面からの設計’を常に意識しながら建築の設計行為を始めることは大切だ。2次元の‘平面からの設計’にいつの間にか終始することに慣らされてしまって、記憶をかたちづくり、記憶を演出する背景としての建築の自由なかたちへの呪縛から解き放されることが難しくなっている。道路に面して唐突にあらわれた建築の断面の中から、建築の本質‘断面からの設計’が呼び覚まされる。
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