□ 高齢者福祉施設 平成14年7月23日
オフィスビルの需要もなければ生産施設の需要も殆んど聞かない。地方都市にあっては事業計画は殆んど高齢者福祉施設の話しか話題に上ってこない。介護老人施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、グループホーム、ケアハウス、高齢者生活福祉センターなどだ。入院したことのある病院などと異なり、高齢者のための施設は、供給する側は未体験の分野であり、それだけに根底で大事なことは何かを真剣に考えて、関わる姿勢が大切だ。 日本の高齢者人口は、2,000年で約2,187万人、高齢化率は17.2%に達し、2,015年には65歳以上の人口は3,188万人、高齢化率25.2%、4人に1人が高齢者になる超高齢化社会の到来が予測されている。少子高齢化、人口構成のピラミッド型はくずれてしまうと元に戻らない。高齢者住宅の供給は100万戸(床)にも達していない。高齢者人口に対して5%弱、高齢者住宅は不足し続けている。従来型の高齢者住宅を単に供給するのではなく、高齢者の生活パターンの変化に応じた住宅の必要性に迫られている。特別養護老人ホームの個室化も注目されている。 数年前に訪れた、コペンハーゲンの高齢者福祉施設プライエムと日本の施設の違いに驚かされた。日本では廊下、談話室等入所者が集まるスペースでは殆んど普段着、ベッドに居る時の状態と同じスタイルで集まるが、プライエムでは違う。廊下、共通スペースはパブリックの場という雰囲気が漂っている。きちんとネクタイをしている人も居れば、化粧もきちんとしている。少人数の集団でゲームをする場面は見掛けるが、大きな集団全体で行動する場面は殆んど見掛けない。個人個人が別々。食事時には、使える使えないは別にしても、必ずナイフとフォークが入所者個人別に食堂にきちんとセットされている。毎回の食事のたびにヘルパーが駄目だと思っても、確認をしてナイフとフォーク以外の道具を提供する。個室は入所者のいままで歩んできた人生の歩みを表現し続ける、家族の写真、想い出の品で飾り付けられている。 高齢者福祉施設、私たちにとって本当に永遠に未体験の分野だ。集団としての入居者に接するのでなく、入居している人、個人として接する姿勢、介護のしやすさでなく、個人を最後まで自立できるシステムを提供できるかがキーワードのような気がする。量の供給も大切だが、高齢者福祉施設のエンドユーザーは何か質の重要性が問われている。
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