□  前払金                                        平成14年7月31日



 一品一品ものを‘つくりあげる’産業だから建設産業は他産業と特殊性がある。もう1つの特殊性は、製造業は製品をつくるのと同額の資金を自分で調達しなければならないが、建設工事は契約を締結した直後に請負契約金額の30%から40%の‘前払金’が支払われる。基本的には自前で資金を調達する必要がない。こんなところに経営審査事項(経審)のY点重視、身軽な経営の要請の背景があるのかもしれない。

 ‘オープンブック’という方式が提唱されている。「コストの透明性の確保」のために、工事請負者が行う専門工事業者との契約や材料、器材等の購入に関する契約の内容と価格、支払い証明を発注者に開示するものだ。これによって建設産業の構造が透明になり、税金がどのように使われるかもわかるようになるという。「内訳がわからないのに、言い値で払うのはおかしい」という論理の展開。

 ‘コストとプライスは違う’。コストの内訳を購入者に示している産業はほかにない。車を購入する時は車両本体価格のほか、付属品や諸費用の明細は示される。これは税金を除いたあくまでプライス(価格)であって、コスト(原価)ではない。世の中で販売者が示しているのは大半はプライスであってコストでない、購入者はそれを比較検討して意思決定をする。発注者と専門工事業者と直接契約を結ぶ形式もある‘CM方式’も「COSTプラスFee」のプライスなのである。

 ‘つくりあげる’特殊性と‘前払金’。もう少し進んで述べると日本の支払い方法、‘前払金’のあと公共発注者が受注者へ毎月毎月清算、支払いはしない特殊性。「毎月支払いしない」国は日本、中華人民共和国、ラオスだけだという。国際競争力で日本の建設企業が太刀打ちできないのもこんなところにある気がしている。建設産業は大きな転換期を迎えている。他産業と同様の普通の産業へと動き出す動きと、建設産業を特殊な商取引にとどめる動きとのバランスをみながらのせめぎあいなのかも知れない。



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