□  路地                                     平成14年8月20日



 近道をして、細い薄暗い‘路地’を通り抜けるとメイン通りに90度の角度でぶつかり合う訳だから、人との出会い方も‘いきなり’の出会い方になる。直線的な出会い方は予期しながらの出会い方だから心の準備は整えられるが、90度の角度の出会いがしらの出会い方は、意外性があって楽しくなる。

 ‘路地’。露地、ローヂ。今では商業ゾーン、工業ゾーン、住宅ゾーン、官公庁ゾーンなどとゾーニングの手法で無機質な都市のヒエラルキー(段階)を持たせた街づくりを考える事は殆んどなくなったが、計画され、近代化の手法によってつくられた都市、街づくりには‘路地’がない。家と家のすき間に出来た通り抜けのスペースだから、生活のにおいが直接的ににじみ出てくる。植木鉢が置いてあって朝顔が咲いていたり、夕食の魚を焼く臭いが漂い、子供の声、家族の声が窓越しに聞こえてくる。近所の人たちがゴミ出し、買い物帰り、子供の送り迎えなどの合間、即席の井戸端会議の場にも変身する。碁盤の目のようになったメイン通りにかくれて、複雑な‘生活の近道’となってつなぎあっているのが‘路地’。

 京都に遷都するのに一番先に考えられたのが地形。北と東、西に山を抱え、南に抜けている地形が都市の大切な構成要素。保水力のある森林が綺麗な水を運んでくれる訳だし、北からの風、雪そして外敵までもガードしてくれる。自分の住んでいる地域も都市の地形の条件をしっかり満たしている。典型的な城下町だったから、城址公園を中心に格子状の碁盤の目となって都市の構成のされ方−「文脈」(コンテクスト)−がはっきりと読み取れる。ここ数年来都市計画、市街地活性化事業等が進んでかなり「文脈」が崩れてきたが、それでも毛細血管のように入り組んだ‘路地’がある。

 8月3日、4日、5日。4日は雨が降ったが、伝統ある「お祭り」が行われ、20万人の人出だったという。「お祭り」は都市の行事の中で一番「劇場性」をもった「非日常的」なハレの舞台。人混みを避けて‘路地’を何度も通り抜ける。‘路地’を通り抜けると人との90度の意外な出会い。都市はいろんな要素が複雑に網状に絡み合って構成される。自然発生的にかたちづくられてきた集落、都市の魅力は、意外性、発見性、もう少し進んで考えると、「劇場性」があるから歩いていて楽しいのである。

    

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