□ 日本の外交                                                   平成15年6月19日


 イラク戦争後の国際社会間のイラクの国づくり、日本の対処の仕方そして北朝鮮問題と外交問題は盛んに論議されている。軍国おじさんと平和ボケおばさんの戦いと揶揄された都知事選も終わったがイラク戦争がいつ始まるか、始まったらいつ終わるか極端に言えば話の話題が途切れれば国民皆ヒステリックな戦争論議で終始したのが今年の春だった。日本が攻撃されたときに自衛隊が何が出来るか、例えば今の法制の中では都知事の許可とかが必要になってくる。30年間通ることがなかった有事法制、新しい現実的なリアルな防衛についてのディベートが求められている。もう一度今の世界情勢を冷静に考えてみることが必要な気がする。

 ブッシュ大統領が強硬路線、タカ派のネオコンの人達が米国の中枢に居るから遮二無二イラク攻撃が正当性を検証する間もなく始まった。イラク戦争後の再建のプランニングがないままに戦争に突入してしまった。両論共にある意味では正しくても本質は違う。ブッシュ大統領でなくハト派の民主党の大統領でも戦争に突入する状況に米国がなっていたことから目をそむける事は出来ない。2001年9月11日同時多発テロ以来米国の外交姿勢が劇的に変わったのである。米国国民は自分の国が攻撃されることのない、あってはならない国だと信じ続けてきた。それまで伝統的に孤立主義であった米国の姿勢を大きく変えたのは先ず60年前の日本による真珠湾攻撃、孤立主義が過去のものとなってドイツとの戦いに参加する引き金になった。それ以上に一般人、特に若い人たちの生命をテロによって奪われたことによって米国民の大半が先制攻撃に賛成する背景が出来上がったのである。

 米国かソ連、さもなければ中立の立場を取る国際社会の時代が長く続いてきた。1950年から1990年までの間冷戦時代が続いてきた。米ソ二極体制の緊張の中でバランスがとられてきた。今の時代、世界のスーパーパワーはひとつ、米国しかない。米国を敵に回すことが国益になると判断する国はひとつもない。小泉首相が外国へ行っている機会が多いのも国内の問題がなかなか出来ない、進まない事情もあるが、緊張のバランスがうまく取れていた冷戦時代は外務省の官僚に任せておくだけで外交が出来ていたが、一極スーパーパワーの中での日本の立場は難しい。日本の新しい外交政策をつくる首相本人の外交の必要性に迫られていることに他ならない。二極化時代の米国はソ連に対して抑止力を常に行使することによってバランスが保たれていた。抑止力の中で米国は攻撃されることのない国と固く信じ続けてきた国民の中で起きたテロの衝撃は大きかった。

 大きな事件、特に戦争にまで行き着くと感情が先走り本質が見えにくくなってくる。マスコミは部分的な事柄を取り上げて報道していく。一緒になって感情が先走った国民皆評論家になっていく。二極化の中では決して日本を通り越して米国のクリントン大統領が中国に10日間も滞在することはなかったし、江沢民との共同記者会見は中国の外交姿勢の変化を象徴的に現している。そして今ロシア、中国との距離が離れた北朝鮮が孤立している。北朝鮮の核保有も孤立した中での米国とのカードのひとつ。一極体制の中での日本の外交、防衛を過去50年間に培われてきた考え方と違った新しい視点が求められている。中国とどう付き合うか米国との関係をどうするかが大きな課題。今までは右よりの人から出ていた憲法改正論、憲法改正すべきでないと言う人はもう殆ど居ない。日本外交が大きな変化の時に来ていることだけは確かだ。

                                          (青柳 剛)

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