寿司を食べに行こう                                              平成16年1月9日


 空腹を癒す時代のリーダーシップは、「飯を食べに行こう」で充分だった。皆、リーダーに付いてきた。今ではただゾロゾロ付いてくるだけの人間は要らない。入社2-3年で起業家精神を発揮する人間を求めている。やる気、モチベーションを高められれば若い社員の力こそ組織にとって重要となる。敏感に反応する若い感性を支えていくのは豊富な情報量に裏打ちされた知識資源の共有と活用、ITツール、そして分かりやすいリーダーシップを発揮出来れば企業にとって競争力の向上となる。

 強烈なリーダーシップは組織を力強く引っ張っていく。それでも明確な方向性を持った分かりやすい理念をしっかり打ち出さなければなかなか人は付いてこない。責任と権限を階層ごとに分け与えてヒエラルキーを構成してきたのが戦後の高度成長の波に乗った縦型のピラミッドに象徴される組織だった。ピラミッドの頂点だから否応なくトップのリーダーシップは高まっていく。それでも分け与えた責任と権限の範囲の中だけで行動する人間が芽生えてくるのは仕方がない。終身雇用と年功序列の日本的なもたれあい、マイナス面は補い合っていつの間にか消しあってしまうインセンテイブが不明確なただ付いてくるだけの組織が出来上がっていく。

 ピラミッド型の組織が責任と権限が委譲される中でどんどん崩れながらスピードと競争力を持った組織へと形を変えだしたのが水平な文鎮型の組織。責任と権限を委譲された組織の人間は一人で決めなければならない。求められるのは判断する能力。ひとりで決める事はもちろん勝手に決める事ではない。みんなで議論をした上で一人で決めていく、衆知を集めてひとりで決めていく。自らの頭で考え、自らの責任で判断していく。判断をするのに必要なのは豊富な情報量と透明性。組織の中の個はどんどん高められていく。マネージメント能力は一言で言えば対人能力の事、文鎮の頭としてのトップのリーダーに必要なのは個の集団としての組織を把握し、方向性を打ち出すマネージメント能力となる。

 空腹を癒す時代のリーダーシップは、確かに「飯を食べに行こう」で充分だった。「飯を食べに行こう」ではみんなの考えは別々、リーダーが寿司を食べに行こうと思っていても別の人間は折角食べるんなら中華、その又別の人間はパスタ、なかなか決まらない。もう今の時代、黙ってリーダーにゾロゾロ付いてくるだけの人間は要らない。責任と権限の中でしっかりした判断をしていく起業家精神を持った人間を求めている。そしてリーダーに必要なのは明確なリーダーシップとマネージメント。そう、「飯を食べに行こう」はただのリーダーシップ、そのほかに必要なのが「寿司を食べに行こう」と言う事の出来るマネージメント能力が加わったリーダーシップ。「寿司を食べに行こう」、みんな寿司を食べに付いてくる。


                                          (青柳 剛)

ご意見、ご感想は ndk-aoyagi@ndk-g.co.jp まで


「森の声」 CONTENTSに戻る