建築模型                                                   平成17年1月18日


 今回の模型作りの目的は、はっきりしている。顧客と最終クロージングのツール。ツールと言ってしまうと何故か軽い響きが拭えない。模型がなくても最終クロージングにはもちろんなりそうな良質な良い関係が出来上がってきた顧客である事は間違いがない。そういった顧客だからこそ模型を作ってお互いの感動を分かち合いたい、手を抜きたくない気持ちが模型作りへと気持ちを掻き立てる。

 最終クロージングの場面の模型で悩むのがどういった模型の仕上がりにするかということ。勘違いしてしまうのが仕上がりに忠実な模型の仕上げをイメージしてしまうこと。色づけから始まって点景まで、殆ど今までの打ち合わせの中で決まっているから単純に実物から忠実な縮尺をかけただけのミニチュア模型作りへと眼が向いていく。抽象化され、言いたい事がデフォルメされ、部分が消去された模型から伝わってくる感覚はより一層生活観のリアリティが出てくるし見ていて楽しい。 

 顧客との関係は、良い信頼関係が会えば会うたびに深まっていく関係が顧客満足の基本。信頼感で結ばれなければ始まらない。時間がかかる。一生の間に一度の住宅づくり。価格だけのドライなやり取りだけではすぐに色褪せてしまう。顧客のために時間を割いた、顧客のためにエネルギーをかけた、顧客のことを考えた愚直なウエットなやり取りの積み重ねが切れる事のない信頼関係をつくっていく。

 顧客と感動を分かち合いたい、手を抜きたくない気持ちが模型作りへと掻き立てた。平常勤務が終わって夜の八時過ぎから始める作業は楽しい。身体はきつくても集中しながら味わう夜更けの妙なハイな感覚は別のもの。スチレンボードの白とグレイのスクリーントーンだけでつくった最終クロージングの建築模型、顧客の感動は最高だったと担当者の感動まで伝わってきた。積み上げられた感動はますます信頼感となって深まっていく。いかにこちら側が損をするかの度合いにかかっている。きっとこの顧客のためにもっと時間を割いていく、エネルギーをかけていく、考えていく。 

                                          (青柳 剛)

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