10匹の蟻                                                   平成17年1月21日


 ビジネスマネジメントの基本は外に向かって企業の舵を取ること、内部の組織をいかにまとめるかにかかっている。活性化された組織を維持し続けるのは大変な事、経営者はいつも悩み続ける。今日の話は人を動かす組織の話。蟻を人に譬える事は不遜な事かも知れない。身近な蟻の話、代表的な話が童話の「アリとキリギリス」、冬になる前に一生懸命働いて冬支度をした蟻は、今頃しっかり休んでいるし、音楽を奏で遊び三昧、今の生活がずーっと続くと思い冬支度をしなかったキリギリスは辛い冬を送っている。蟻を来る日も来る日もじっくり観察し続けたのは孤高の天才画家熊谷守一、蟻の足の動き方まで観察し続けた。そう、蟻をもう少しじっくり観察すると集団としての組織のあり方が見えてくる。働きながら群れを成す蟻の組織から学ぶ事、見えてくるものがありそうだ。

 「百匹の蟻の群れを見ていると面白い、一生懸命働いているのは20匹、70匹の蟻はそれ相応に普通に働いている。ところがよく見ていると残った10匹の蟻はぜんぜん働いていない。これが集団としての蟻の動き方、春になったら観察してみればいい」と面白い会話になったのは去年の暮れ、グループ全体で千人以上の人を雇用しているトップの人との2人だけの夕食会。自分ひとりで起業してきたトップの話は面白い。攻めと守りを繰り返しながら、山あり谷ありの人生を送ってきた中から生まれてきた実感実践組織論に違いない。お互い飲んだ酒もノンアルコールのビールを2本ずつだったし、別れ際の支払いも掛かった分だけ綺麗に半分に分けた割り勘、これは長続きする。また、時間をとっていろんな話をしてみようかって気にもなってくる。

 軽量な組織にするにはリストラが一番。リストラがリストラクチャリング(再構築)の事だと分かっていても「人、もの、金」の経営資源の軽量化、特に人減らしに眼が向いていく。少ない経営資源でいつも最高の効率で進めていくことが理想のかたち。血のにじむようなリストラをやり続けてきた、今後もやり続けなければならないとは先日会った巨大組織の人事担当者の話。ただ人減らしのリストラを続けていると働く人のやる気まで失せていく。少ない人数でやる気の失せた集団になってしまったら目も当てられない。リストラをしながらやる気を引き出していかなければならない。同じ事をして、昨日と同じ事を目指しているんならただ落ち込んでいくだけ、硬直した組織から逃れられない。「変わった」、「変化した」実感を持てる組織のリストラを目指していくとは充分頷ける。

 ビジネスマネジメントの基本は外に向かって企業の舵を取ること、内部の組織をいかにまとめるかにかかっている。働きながら群れを成す蟻の組織から学ぶ事、見えてくるものがある。ぜんぜん働かない10匹の蟻、その10匹を取り上げても残った90匹の中から又その1割、9匹が何もしない蟻になってしまう。じっくり観察してみればいい。組織はこんなことの繰り返しと思うことが大切だ。達成した気分の人、やる気の失せた人、元々仕事に向いてない人、組織の雰囲気に会わなくなった人、1割の人を切ってしまうことは簡単な事。そうは言っても又1割の何もしない人が浮いて出てくる、いかにこの1割の人を7割のそれ相応の普通の人に近づけられるかにかかっている。人を蟻に譬える事は不遜な事とは分かっていても「アリとキリギリス」、真っ当な成果主義が出てくる所以はここにある。

                                          (青柳 剛)

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