ランコン                                                    平成19年2月27日


 ランコンという言葉があることを知らなかった。勿論、最近の言葉だから知らなくても当然だが、一言で言えばランナーたちの合コンのことだそうだ。ランナー達が集まるところに掲示板があってそこに待ち合わせのことを書き込んだり、食事に誘ったりしてうまくコミュニケーションを計っていることを言う。夕方、会社帰りに銭湯で着替えてランナーの仲間達が皇居の周りを楽しそうに走っている姿が放映されていた。勿論、銭湯に掲示板、伝言板もあるが、走りながら今夜の予定を聞きあったり、休日の計画をランナー同士で走りながら立てていると言う。あいにくの雨降りの寒い日曜日、東京マラソン、3万人が参加した、96%の完走率だそうだ。バックアップしたボランティアの数も多く、ランナーの一大イベントだった。シューズひとつで楽しめるスポーツだからこれからどんどん拡がりそうな気がする。ランコンの輪もいろんな形で大きくなりそうだ。

 ランナーで、中小企業の陸上競技部といえば新潟の重川材木店が有名だ。テレビでも何度か放送されている。普通に大工作業をしながら練習に励む選手たちの生活を追っていた。あまり全国的に名前の知られていない地方の企業の陸上競技部が強いチームだから話題になる。重川材木店のホームページを見てみると面白い。歴史は古いし、木にこだわった和風、民家の建築をつくっている。陸上競技部のページを開けば「仕事を頑張りながら競技に取り組むメリット」・・・「仕事を頑張りながら競技に取り組むことは、若いうちは大変だと感じるかもしれませんが、競技を辞めた後に、仕事を頑張ったことが本当に自分のためになったと思える時が必ず来るはずです。長い人生、競技を止めたときからが本当のスタートです」。ニューイヤー駅伝に出る、2012年ロンドンオリンピックマラソン出場、そして2012年技能五輪大工部門出場も目標にしている。走ることを基本に目標を定めるから企業の目標がはっきり見えてくる。

 重川材木店のように本格的なわけにはいかないが、1人1.8km、5人で走る市民駅伝に参加してみようかって気に最近なってきた。ほおっておけば、企業の組織はすぐに腐りだす、いわゆる、大企業病に罹ってしまう。外に向かって組織がまとまらないと内にばかり眼が行きだす。研修会に行ってきた社員が帰ってきて社内で大声を出しながらハキハキ挨拶をするようになって「たいしたもんだ、研修の効果はある!」と思って見ていてもいつの間にか元気さは消え、研修前の元通りになってしまう話はよくある話、組織は何にもしないと楽なほうに流れていってしまう。気づいてみれば問題処理だけの日々が過ぎていく。こんな空気が組織に漂いだしたことを感じ取ったら経営者は外に向かって眼に見える目標、敵をつくり出すしかない。簡単な外に向かっての目標、5人で走る市民駅伝でも効果はありそうだ。

 今週号の週刊新潮、「帝都の愚挙」として東京マラソンを挙げていた。トイレが足りない、コンビニのトイレまで満員だった、ごみが散乱した、一般の買い物客が混乱した、首都機能までマヒした・・・、確かに想像するだけでもマイナス面は多い。そうは言っても、マイナス面だけを考えていれば新しいことは進まない。3万人以上のランナーが楽しくそれぞれ思い出をつくりながら首都東京のメイン通りを走ったということに意味がある。走ることはいつも健康には気を使うし、考え方も前向きになる。生活にリズムまで出てくる。ランコン、みんなでコミュニケーションを計りながら楽しく走る、後は走った後の結果がきちんと出るから輪が拡がっていく。5人で走る市民駅伝まであと1ヶ月、そろそろみんなで練習する時期になってきた。

                                          (青柳 剛)

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