毎年秋口には恒例の建設業特集が組まれる。ここ数年に亘って建設業界の惨憺たる経営状況の特集だったが、今年はそれにも増して、過去に見られないほどの厳しい状況を特集していた。最初が9月6日号の「週刊ダイヤモンド」、9月一杯まで店先に並べられていた。見出しのタイトルは「ゼネコン・不動産同時多発破綻!」、1ヵ月間も平積みで何冊も並べられていたから、反響はそれだけ大きかったと言うことだ。その後に出たのが10月4日の「週刊東洋経済」、「不動産・ゼネコン・マンション大激震」の見出しで同じような切り口だった。去年までの建設業特集に加えて不動産・マンションまで加わったから、おそらく建設業以外の一般の人にまでこの2誌の特集は興味をそそられた。毎年この特集を手にする度に暗澹たる気持ちになるが、今年こそは、本格的に手を打たないとどうにもならなくなるという気持ちを掻き立てられたのである。
特集の中身を見てみると、破綻の仕組みが良く分析されている。九州から北海道まで、上場・非上場を問わず、それぞれの地域を代表する建設業が経営破綻に陥っている。地方の経済を牽引してきた建設業の破綻である。不動産・マンションと一体になった破綻だから、破綻の規模も大きい。数十億から数百億単位までの負債規模になっている。破綻の連鎖の仕組みは、地方の建設業が新分野としての不動産・マンション事業への進出であり、複雑な分析のチャート図が載っているが、一言で言えば平成10年から続いてきた公共投資削減を民需で補おうとした結果である。もともと体力が弱っているところに民需としてのマンション・不動産事業への進出だったから、マンション・不動産不況の影響を直撃に受けて経営破綻に陥ってしまったのである。
ところで、こういったマンション・不動産と一体になった建設業の破綻の構図ばかりに眼を向けていると見過ごしてしまう危険性が沢山ある。ものをつくっていくプロセスは同じでも、経営という眼で見ればまったく異なった分野であることである。地域と密着をしながらものをつくっていくのが地域の建設業であり、地域を守っていく姿が建設業の本来の形である。ドライなビジネスの方程式だけでは割り切れないものを地域の建設業は持っている。利益が出ていても資金繰りが行き詰るとあっという間に破綻してしまうマンション・不動産業界とは似て非なる業界が地域の建設業である。時間をかけて地域と密着しながら歩んできた建設業界との距離は遠い。読み違えると、公共投資が減り続け、地域の建設業が行き詰ると同時に地方が疲弊し続けることへの視点が抜けていく危険性をはらんでいる。
2つの週刊誌の衝撃的な建設業特集が出た後も各地で建設業破綻のニュースは止まらない。ますます加速する。景気対策、地方に対する配慮と動き出してもすぐには結果が出ない、すぐには答えが出ない。製造業とか他の産業と違って景気の波といつもタイムラグが出るのが建設業の特徴、気付いたときにはもう手遅れになっている。いいと思っていると悪くなりだしているのに気付かない、悪くなってしまうと簡単には上向きにならないのである。ここ10年間続いてきた建設業に対するマイナスの風、元に戻るのにはまた10年はかかると思えばきっとそれが正しい。マンション・不動産と一体になった建設業破綻の構図、それはそれで大きな社会問題だが、見過ごされてしまいそうな地方の建設業の構造的な不況の仕組みにしっかりと眼を向けなければならない。今年の特集こそは、本格的に手を打ち出さないと地方がどうにもならなくなるという焦った気持ちを一層掻き立てられる。 (青柳 剛)
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