去年の秋から一気に不景気の風が吹き出した。すべての産業に亘っての不景気風だから、それこそ百年に一度の不況なんだと思う。今までの不況はどこかの産業は好かった、全部が悪いなんてことはなかった。建設産業は去年の秋どころかそれ以前から恒常的な不況業種だったから一層始末が悪い。最近は、自動車・電機などの製造業の派遣切りの報道に隠れて建設業の話題はとんと報道されなくなってしまった。相変わらず不況業種なのである。いや、製造業の設備投資が一気に中止になったことによって、状況はもっと深刻なのである。マンションはもちろんだが、民需の落ち込みは想像を絶する結果となりそうだ。誰もが明日の生活の糧をどうしたらいいかということばかりに眼が向きそうな状況になってきた。
こうなってくると眼が向くのは公共投資、国も経済対策に力を入れなければならない。1月の末には2008年度第2次補正予算が成立した。先週には新年度予算が成立した。09年度予算案には公共事業費とは別枠として緊急経済対応予備費の1兆円が組みこまれている。平成10年からマイナス3パーセント減となり続けてきたことからの転換である。この動きは、公共事業費を削減され続けてきた建設業界にとっての期待となって膨らんで行く。それでも今回の経済対策としての公共投資へのシフト換えの政策も良く考えてみれば一過性、製造業を中心とした景気が回復し出せばそのうちまた元に戻ってしまう可能性がある。おそらくあと3年もすれば景気は回復するし、経済対策としての公共投資に向いていた眼も消えていってしまうのである。
いつも政策に影響され、翻弄され続けてきたのが建設業界である。他の産業にはあり得ない。請負といわれるように待ちの姿勢が抜け切れないのも建設業界である。ただじーっと変化を受け入れることが繰り返されてきた。戦後続いてきた右肩上がりの公共投資から一気に10年間続いたマイナスの波、ようやく公共投資に目が向いてきた今こそ、建設業のミッションをきちんと確立する必要がある。この10年間で建設業の周辺で起きてきたことを整理してみれば先が見えてくる。何がどう変化し、変化しようとしているのかを検証してみる。特に地方で公共事業を経営の中心に据えてきた建設業の役割を明確にしなければならない。公共工事を請け負う代わりに失業者を受け入れ、景気回復の下支えとなり、積雪・災害時には災害対応能力を発揮してきたのである。
今週号の「日経ビジネス」(2009,3.2号)は「建設焦土―断末魔の500万人産業」として特集を組んでいる。年明けから年度末に向かっての厳しさと建設産業の古い体質について書いている。相変わらず地方を代表する建設業の経営破綻の動きは止まらない。それでも、一過性のにわか雨かもしれないが公共投資に目が向いてきたことだけは確かである。にわか雨だと気づかないから又同じことを繰り返すのである。こんなときこそ外に向かって「新しい公共投資のあり方と建設業が果たすべき役割」をしっかりと発信し、確立するいいチャンスなのである。今こそ、政策に影響され、翻弄され続けてきた建設業界が脱皮する必要性に迫られている。それは建設業がほかの産業と同じ、普通の産業へと変わりだす動きである。(青柳 剛)
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