□ ブランドとしての建設業協会                                                             平成21年6月8日


 ブランドは見えてくる中身によってかたちづくられる。どの業界団体も「護送船団方式だった」と言われて久しい。それでも最近は、ほとんどこういった指摘は聞かなくなった、業界団体のあり方そのものが変わってきたのである。同じ考えで、同じ行動をする、数の力頼みの団体としての役割は終わりをつげた。団体に入っているだけで団体としてのメリットを享受できるような生易しい時代ではなくなったのである。団体としての役割を明確にしながら、どういった行動をしているか、どういった考え方で動いているか、どういった人達で運営されているか、活動の中身が明確に浮き彫りになってくることによって団体としての存在意義、価値が出てくるのである。今週号の週刊ダイアモンドの「ゼネコン・不動産崖っ縁決算」を脇に置きながら、厳しい状況下の建設業協会のあり方を考えてみようと思い文章を書き出した。

 戦後の経済は、一言で言えば、足りないものをつくっていくことだった。電気もなければテレビもない、道路もなければ橋もない、高速道路も新幹線もない、下水もダムもない、もちろん住むための家もない、すべてに亘って新しいものを足していく必要に迫られていた。高度成長もそうだが、常に右肩上がりの状況で歩んできた。つくってもらえるだけで有り難かった。足りないものをつくっていけばよかったから、つくり方はそんなに問われなかったのである。こういった状況下での建設業協会の果たしてきた役割はそれなりに大きかった。量をこなすために建設業協会の人達に任せておけば都合がよかったのである。建設業協会の内部で行うことといえば、お互いにマイナスなこと、工事の安全から始まって不祥事などが起きないように行動規範をつくって行動することで事足りていたのである。

 ところが、足りないものがある程度行き渡り、そのうえ経済も下降気味になると話はかなり変わってくる。国民誰もが中身を知りたくなってくるのである。どういったつくり方をしているのか、結果だけでないそのプロセスに眼が向くのである。ただつくってそれで終わりというわけにはいかない、プロセスに加えて、どれだけいいものを提供してくれるかが問われるのである。創意工夫、新技術、ホスピタリティー、透明性、アカウンタビリティー、近隣住民対応などが問われる所以である。上昇気味なときの建設業協会のあり方と異なるのはこの点である。お互いにマイナスのことを牽制しあっていた時代から、プラスのことをどれだけ仲間同士で真似をし合って、常に上昇しながら、外に向かって発信できるかにかかっているのである。誰かが何かをしてくれて、それに付いていくだけだった団体活動の転換が求められているのである。

 ブランドは、見えてくる中身、一言で言えば裏側にある人柄によって支えられている。何をしているのか中身が良く分からない団体が護送船団方式といわれてきた。週刊ダイアモンドを読んでいれば、建設産業の疲弊度は極限に達している。大企業から地方の企業まで抱えている問題は大きい。業界そのものが再編がらみの兆候まで出ている。こんなときこそもう一度我々業界の役割は何なのか、本来のミッションをしっかりと見つめなおす時期に来ていることだけは確かだ。分かりやすい基本理念とそれに伴った具体的な行動、時代の変化を敏感に感じ取った目標を掲げながら、建設業協会の会員それぞれの顔が地域の中で見えてくれば建設業協会のブランドは確立されてくる。そして、ブランドは、こだわりを持って、使いたくなる人が増えてくればくるほどその価値が出てくるのである。(青柳 剛)

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