暑いときには、クーラーの効いた部屋でダラダラひっくり返っていないで汗びっしょりになるのがいい、そうでなければ夏バテ、身体全体がだるくなる。気持ちが前向きになれば暑さもどこかに吹き飛んでしまうと思いながら筋トレにこの時期は特に気合が入る。次から次へと吹き出る汗を拭いながらのトレーニング、終わった後、冷たいシャワーを全身に流し終わった時の爽快感こそ気持ちがいい。「今年の夏は飛びっきり暑い 夏らしい夏、夏が暑くて良かったあ」と叫びたくなるような瞬間である。暑い夏にすることといえば、滲み出てくる汗に加えて、こうして身体の中から汗を出すのがいい、要は身体全体がすっきりすれば気持ちは前向きになり、夏に正面から向き合うことが出来るのである。
ところで、すっきりすることといえば、「夏に映画」は良く似合う。部屋にクーラーもなく、身体のやり場に困る若い時に出かける場所はいつも決まって映画館だった。当時流行っていた、池袋・高田馬場・飯田橋・巣鴨などの名画座系の映画館巡りをするのが夏の過ごし方だった。入場料も安く、暑い盛りの時間に冷えた館内で過ごし、見終わった頃には、少しは陽も翳りだし暑さも和んでいた。あの当時と違って、今ではどこに行ってもクーラーのある時代になったが、この辺の気持ちがあるから、夏の暑い盛りに映画を見ようという感覚がなかなか抜け切れないのである。「夏には映画」、そんなことを考えながら、今年は7月31日に公開されたアンジェリーナ・ジョリー主演の「ソルト」を見に行ってきた。
「夏には映画」だが、涼しければ何でもよかった時と違って、最近は見ていてスカッとするような映画でないと見に行く気が起きない。そのうえ、闘志が沸いてくるような映画が夏に合う。「ソルト」の予告編を見ているときから「これは夏向き 見に行こう」と決めていた。ロシアからの2重スパイの疑いをかけられたアンジェリーナ・ジョリー扮する「ソルト」、ストーリーはどちらが敵で味方か分からなくなるようなどんでん返しの展開で終わってしまうが、この間次から次へと繰り返される激しいアクションが面白い。もう駄目かと思って見ていると、考えられないようなアクションで必ず復活をする、これは見ていて退屈しない。テンポも速い。ゴルゴ13を思わせるが、どちらかといえば、女性版ブルースウィルスだ。
アンジェリーナ・ジョリーは、身長はそれほど高くなくても、筋トレで鍛え上げられた身体を見ているだけでもスカッとする。そのうえ、メリハリのある顔つきもいいし、大きな口と派手目な厚い唇もこういった役にはピッタリ合っている。いい役どころだ。あっという間に、1時間40分の上映時間が過ぎていた。「夏には映画」と思って見に行くが、「ソルト」は「夏に見る映画」だった。映画館を出る頃には、気持ちもすっきり、暑さに向かって歩く速度まで速くなっていた。夏から逃げることなく正面から向き合う、ジムで身体全体が汗びっしょりになるのもいいし、闘う映画を見に行くのもいい。「ソルト」を見た後、ジムだけでは物足りない、部屋の中に腹筋台を引っ張り出して、朝晩の腹筋とダンベルを動かす数まで増えだした。ほとばしる汗と共に、夏と正面から向き合っている。(青柳 剛)
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