ネットの時代といっても、変化の時こそ「専門紙の役割」は大きい。中小建設業、地方の公共工事主体の建設業の特質はいくつも挙げられるが、何といっても「待ち」の姿勢を引きずってきたということであろう。与えられるものを受けるという受け身の姿勢が培われてきたのである。明治33年以来から続いてきた指名競争入札制度と「金は出すけど口は出さない」という請負制度の仕組みがそうさせた。「待ち」の姿勢は、常に結果重視へとつながり、変化に付いて行きにくい業界が出来上がったのである。
極端にいえば、毎朝各社が建設専門紙を読んでいるにも拘らず、それを読み込むことをしなかった業界ということが挙げられる。大半の紙面が入札情報に割かれてきたことにもよるが、入札予告と落札結果を見ることだけに慣らされてきた。どの分野の産業でも業界専門紙は存在するが、落札金額と業者名が載っただけの建設専門紙は特異な存在である。公共投資の量はどんどん下がり続け、一般競争入札に始まり総合評価落札方式の導入、請負型から管理型など、細かく挙げていけば調達の仕組みはめまぐるしく変わっている。変化を読み取っていくには日々の新聞情報こそ大切であろう。
歯切れのいい説明で人気のある池上彰の「小学生から『新聞』を読む子は大きく伸びる!」(すばる舎刊)が面白い。新聞のなじみ方から始まって、読み方、語彙力、知識量、書く力、そして考える力を鍛えるために日常的に新聞を読むことが如何に役に立つか、改めて新聞を読むことの意味が分かりやすく書いてある。そんな中でも、「人はノイズに触れることによって、自分の新しい興味関心に目覚めることがあります。ノイズは、個性を形成する上で、時に大事な要素になるのです。ノイズをカットした社会的に関心の高い記事に触れる機会しかないと、子供の世界は広がっていきません」(62〜3頁)との指摘は、インターネットのニュースとは違った、紙面の記事による発見の面白さのことを言っている。
「待ち」の姿勢から抜け切れなかった地方の中小建設業界だったが、めまぐるしく変わっていく業界の変化にしっかりと付いていかなくてはならない。何をしたら良いかと立ち往生するような状況だが、取り敢えずは毎日眼にする建設専門紙を読み込むことから始めてみてはどうか。全国紙・地方紙と数も多いが、専門紙、とりわけ全国紙には一般紙にはない深掘りされ、考えさせられる記事も数多い。最近では「口蹄疫130日の戦い」について、建設通信新聞1面で8月31日から6回に亘って特集した記事などは読み応えがあった。結果としての入札情報はすべてネット上で検索できる時代であるが、書き手と読み手の双方が時代の変化を共有し、先取りするために新聞を読む、後追いだけの「専門紙の役割」は終わりを告げようとしている。(文中敬称略)(建設通信新聞 9月15日)
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