それこそ桜が満開、春爛漫の4月、社内の土木技術者の結婚披露宴に出席してきた。4年近くも空いただろうか、久しぶりの御祝いの席である。以前はもう少し頻繁にあったような気がするから、それだけ若い社員の数が少なくなってきたということであろう。祝辞のために新郎の入社以来の履歴を調べてみた。平成12年に技術系の高校卒業と共に入社した。18歳で入社、それまで大人しくて、今一つひ弱な感じがしていたのが急に変わりだしたのが3年目あたりだった。「土木の本を買ったりして、勉強もしている、変わった」と社内で噂にもなるほどの変わり様だった。2級土木施工管理技士の資格もこの年に取得している。それまでは先輩技術者といつも一緒、それが早速県発注の2000万円弱の工事を一人で「主任技術者」として担当するようになった。夜間作業前に大きな声でKY(危険予知)活動の指揮を執っていた姿が頼もしく思い出される。担当した工事を辿ってみると、町村の土地改良工事から始まり、農政の区画整理工事・林野庁の災害復旧工事・県土木のPC工事、その後平成20年からは殆んど毎年国土交通省の工事に従事、今では1級土木施工管理技士の資格も取り、国土交通省の河川工事の主任技術者・現場代理人として作業にあたるバリバリの技術者として成長した。
技術者のことといえば群馬県建設業協会では1年程前に「技術者問題に関するアンケート」を行った。一品一品現地生産の建設業にとって、産業としての根幹を支えているのが技術者、どんな変化の時代になっても技術者の養成を着実にしていくことが求められている。東日本大震災の発生と共に技術者不足問題が被災地を中心に浮き彫りになったが、被災地以外の群馬県でも「技術者の採用の募集を毎年何度出しても集まらない、ようやく高校生の新卒を採用出来ても3年も経たないうちに職種替え、辞めて行ってしまう。それどころか、こうして毎年建設投資が減り続ければこの先の見通しも立たない、技術者の確保にまで手が回らない、冬の除雪もそのうち出来なくなってしまう・・・」と程度の差はあれ、抱えている問題の深刻さがあちこちから聞こえていた。全国各地の度重なる事業量の減少に加えて過当競争によるダンピング受注が引き起こしてきた弊害も大きい。人材の確保どころか、ギリギリのところで、建設業をどうにか経営しているのが実態だ。「しっかりと調査をして問題提起をしなければ、ものづくり産業としての地方の建設業が崩壊してしまう」と考えながら、全協会員にアンケート調査を行ったのである。
技術者の象徴としての「1,2級土木施工管理技士」に限って言えば、20代の技術者の圧倒的な不足、過半数を50歳以上が占める、と調査結果は予想以上に衝撃的なデータとなって表れた。これでは5年後には技術者が半減してしまう企業まで出てくる。早速これらのデータを持ちながら県庁の記者クラブで記者会見を行い、これ以降、様々な場を通して「技術者不足」について問題提起を行ってきた。原因は事業量の減額もあるが、先行きの見通しが立たない状況が一番大きい。政治というか政策に翻弄され、業界はどんどん疲弊していく、いきなり政権が変わった途端、進んできた事業がいとも容易く中止になってしまえば、「技術者の心」までもが壊れて行ってしまう。技術者としての矜持がズタズタになる。要は、場当たり的に事業量と仕組みを変えることを繰り返してきたから、人の採用も場当たり的にならざるを得ない状況が続いてきた。この建設業の構造的な仕組みに問題がある。加えて設計単価の基準になる「労務単価」、平成11年度に普通作業員の単価が1万7100円だったのが平成24年度は13100円と、ここ何年間も下がり続けた結果、「建設業で働いてみよう」と思う若者がいつの間にかいなくなってしまったのである。
現場作業としては一息つきそうな4月の始めを選んで結婚式を挙げた社員、仲間に対する気配りも出来ている。同じ時期に入社した社員も何人かいたが殆んど中途で退社していった。「美容師になりたい」とか、「競輪の選手になりたい」とか、いろいろな理由を言いながら、辞めて行った。辛抱も必要だが、おそらく中途で「技術者のやりがい」を見出すことが出来なかった。結婚した社員は節目の間隔がいいローテーションとなって現場を経験することが出来、成長した。3年目で2級土木施工管理技士の資格も取れたし、その後は独り立ちをしながら大規模な工事にチャレンジすることが出来たことも「技術者のやりがい」精神を培うのに大いに役立った。平成21年の暮れには1級土木施工管理技士の資格も取ることが出来た。資格と現場の組み合わせが順調、中堅技術者として新たなステージを踏み出そうとする春の結婚式だった。新年度、業界に対して前向きの風が吹き出している。「事業量の確保」と年度末に引き上げられた「労務単価」、それに加えて「技術者のやりがい」を培う「資格制度」、この3本の矢が確実に回りだせば疲弊した業界もじわじわと立ち直りそうだ。取り敢えずは「資格取得期間の短縮」あたりから、もう一度、声を上げてみようか。(建設通信新聞 5月13日)
技術者のことといえば群馬県建設業協会では1年程前に「技術者問題に関するアンケート」を行った。一品一品現地生産の建設業にとって、産業としての根幹を支えているのが技術者、どんな変化の時代になっても技術者の養成を着実にしていくことが求められている。東日本大震災の発生と共に技術者不足問題が被災地を中心に浮き彫りになったが、被災地以外の群馬県でも「技術者の採用の募集を毎年何度出しても集まらない、ようやく高校生の新卒を採用出来ても3年も経たないうちに職種替え、辞めて行ってしまう。それどころか、こうして毎年建設投資が減り続ければこの先の見通しも立たない、技術者の確保にまで手が回らない、冬の除雪もそのうち出来なくなってしまう・・・」と程度の差はあれ、抱えている問題の深刻さがあちこちから聞こえていた。全国各地の度重なる事業量の減少に加えて過当競争によるダンピング受注が引き起こしてきた弊害も大きい。人材の確保どころか、ギリギリのところで、建設業をどうにか経営しているのが実態だ。「しっかりと調査をして問題提起をしなければ、ものづくり産業としての地方の建設業が崩壊してしまう」と考えながら、全協会員にアンケート調査を行ったのである。
技術者の象徴としての「1,2級土木施工管理技士」に限って言えば、20代の技術者の圧倒的な不足、過半数を50歳以上が占める、と調査結果は予想以上に衝撃的なデータとなって表れた。これでは5年後には技術者が半減してしまう企業まで出てくる。早速これらのデータを持ちながら県庁の記者クラブで記者会見を行い、これ以降、様々な場を通して「技術者不足」について問題提起を行ってきた。原因は事業量の減額もあるが、先行きの見通しが立たない状況が一番大きい。政治というか政策に翻弄され、業界はどんどん疲弊していく、いきなり政権が変わった途端、進んできた事業がいとも容易く中止になってしまえば、「技術者の心」までもが壊れて行ってしまう。技術者としての矜持がズタズタになる。要は、場当たり的に事業量と仕組みを変えることを繰り返してきたから、人の採用も場当たり的にならざるを得ない状況が続いてきた。この建設業の構造的な仕組みに問題がある。加えて設計単価の基準になる「労務単価」、平成11年度に普通作業員の単価が1万7100円だったのが平成24年度は13100円と、ここ何年間も下がり続けた結果、「建設業で働いてみよう」と思う若者がいつの間にかいなくなってしまったのである。
現場作業としては一息つきそうな4月の始めを選んで結婚式を挙げた社員、仲間に対する気配りも出来ている。同じ時期に入社した社員も何人かいたが殆んど中途で退社していった。「美容師になりたい」とか、「競輪の選手になりたい」とか、いろいろな理由を言いながら、辞めて行った。辛抱も必要だが、おそらく中途で「技術者のやりがい」を見出すことが出来なかった。結婚した社員は節目の間隔がいいローテーションとなって現場を経験することが出来、成長した。3年目で2級土木施工管理技士の資格も取れたし、その後は独り立ちをしながら大規模な工事にチャレンジすることが出来たことも「技術者のやりがい」精神を培うのに大いに役立った。平成21年の暮れには1級土木施工管理技士の資格も取ることが出来た。資格と現場の組み合わせが順調、中堅技術者として新たなステージを踏み出そうとする春の結婚式だった。新年度、業界に対して前向きの風が吹き出している。「事業量の確保」と年度末に引き上げられた「労務単価」、それに加えて「技術者のやりがい」を培う「資格制度」、この3本の矢が確実に回りだせば疲弊した業界もじわじわと立ち直りそうだ。取り敢えずは「資格取得期間の短縮」あたりから、もう一度、声を上げてみようか。(建設通信新聞 5月13日)
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